Zaha Hadid Architects

マカオのMorpheusホテルのパビリオン――三角形の敷き詰め模様によりダイヤモンドカットを思わせる作品を開発

Morpheusは、マカオのコタイのシティ・オブ・ドリームスに新たに建設されたコンテンポラリースタイルのホテルです。建設は2012年に、世界的に有名な建築事務所Zaha Hadi Architects社に委託されました。独特の未来的なホテルからは街の絶景を望めるほか、サロン、屋上プール、カジノルーム、レストラン、吹き抜けロビー、多目的室、会議室が完備されています。Morpheusホテルは、超高級ホテルの体験とイノベーションを組み合わせることで、唯一無二の未来空間を演出しています。

Morpheusホテルは、自由造形による外骨格構造を採用した世界初の高層建築です。中国古来の豊かな翡翠彫刻文化に見られる流体形状をヒントにした、複雑なパターン模様が特徴です。廃墟の基礎部分をくり抜くというイメージに基づき、建物の中心部分には複数の大きな穴が空いており、ホテルの向こう側の都市景観が見えるようになっています。外骨格で建物を支えているために内部に支持壁や支持柱がなく、ホテル内の空間を最大限に活用することができます。2つの塔は地上付近と屋上付近だけが繋がっており、塔の間にある吹き抜けは最上階まで続いています。また、吹き抜け空間には外壁と外骨格がめり込み、北側と南側のファサードが一続きになっています。ホテル内のレストラン、バー、ゲストラウンジは、接続通路を使って行き来できます。

課題:奇抜な設計のための奇抜な制約条件の計算

1979年に設立されたZaha Hadid Architects社は、イノベーションに欠かせない重要な要素――最新理論の応用、体系的な知識生成、共同設計――を他社に先駆けて取り入れてきました。同社は先進的な取り組みをさらに推し進めるべく、2007年に計算・設計研究部門(co|deチーム)を立ち上げました。co|deチームは、デジタル設計とデジタルファブリケーションがもたらす無限の可能性を活かした物理的・経済的・人間工学的に実現可能な建築ソリューションを探索するための、初期設計手法の開発に取り組んでいます。

ホテルの建設開始からしばらく経った頃、co|deチームは内部のパビリオンの製作に着手しました。現在パティスリーになっているロビー下の空間です。課題は、建物自体の複雑な敷き詰め模様の三角形表現に見劣りしないような、クリエイティブな三角形ベースの構造物を新たに創り出すことでした。三角形の敷き詰め模様の2層構造を製作するために、チームはAltair HyperWorks™を用いて、既存のロビースペースと調和が取れるような設計コンセプトの開発に取り掛かりました。面を区切ったり分割したりして目的の三角形ベースの構造物を作るという単純な方法もありましたが、構造部材を軽量化および薄板化して圧延機で曲げられるようなものにする必要がありました。

チームはまずいつものように、計算上の軽量構造を作成しました。この段階では面と頂点が非常に少ない設計でしたが、メッシングプロセスを利用することでさらに細かな三角形に分けました。HyperWorksでガイドメッシュの数を調整することで、一貫した制約条件の下で、外観、構造健全性、対称性、開口部、スリットなどを検討および評価することができました。電気配線や設計の要件およびクライアントの要望などに基づく制約条件は、カスタムサーフェスを作成することで解決し、これを基に構造物の設計を作成しました。

パビリオンは、8mm厚のアルミ板を湾曲させて中空構造にしたもので構成されています。各頂点から8本の支柱が伸びている構造ですが、接合部なしで8本の支柱をまとめるような設計にする必要がありました。つまり、頂点が実質的な末端になるようにしなければならなかったのです。そこで、骨格ファブリケーションアプローチにより、アルミ板を平面の状態で切断してから適宜湾曲させて筒状にすることにしました。モデリングシミュレーションでは、アルミ板の湾曲とレーザー切断のほか、頂点を中心にして支柱を曲げたり、支柱の中間部分に留め具を取り付けたりすることができるモデルを開発しました。この手法により、材料使用量の削減に成功しました。シミュレーションで1つ1つのアルミ部材を作成して隙間なく接合することができたため、特別な切削加工や成形や鋳造が必要なく、より軽量かつ経済的な、高級感のある金属構造を完成させることができました。

ダイヤモンドカット風の三角形のみで構造健全性を満たす

パビリオンの丸天井形の天蓋は門のようなアーチを描き、上部の1層構造が左右に広がりながら2層に分かれることで、利用客のための空間を作っています。この設計コンセプトにより、照明用の電気配線を通すための中空構造など関連の制約条件も満たすことができ、このコンセプトに基づいて三角形の敷き詰め模様を作成しました。

各三角形が中空かつダイヤモンドの断面のような形状をしたこの独特の設計は、2つの表情を見せるという非常に細かな味わいがあります。上部の1層が途中で2層に分かれているので構造物自体が立体になっており、地面と接する足の部分はほとんど格子状の管のようです。同時に、内側の面も外側の面もダイヤモンドの断面の形状を作っています。これは、ファブリケーションベースの設計論理によって実現しました。

Zaha Hadid Architects社のSenior DesignerのHenry Louth氏は、「構造レイアウトの決定の際にAltairのソフトウェアを利用したことで、重要な構造部材を見極めることができました。詳細な設計検討により、最終的に最適形状と製造制約の理想的なバランスを実現した作品に仕上がりました」と述べています。

Zaha Hadid Architects社の設計チームは、Altairのソフトウェアを利用することで、難しいエンジニアリング条件を満たす構造を確認できただけでなく、その制約内で傑出したクリエイティビティを発揮することができました。その成果として、建物自体の複雑でモダンなモチーフと調和しながらも、大胆に存在感を主張する作品が完成しました。

About Zaha Hadid Architects

1979年に設立されたZaha Hadid Architects社は、イノベーションに欠かせない重要な要素――最新理論の応用、体系的な知識生成、共同設計――を他社に先駆けて取り入れてきました。同社は先進的な取り組みをさらに推し進めるべく、2007年に計算・設計研究部門(co|deチーム)を立ち上げました。co|deチームは、デジタル設計とデジタルファブリケーションがもたらす無限の可能性を活かした物理的・経済的・人間工学的に実現可能な建築ソリューションを探索するための、初期設計手法の開発に取り組んでいます。

Architect
Architect: Zaha Hadid Architects
Design
Zaha Hadid and Patrik Schumacher
ZHA Project Director
Viviana Muscettola and Michele Pasca di Magliano
ZHA Project Architects
Michele Salvi, Bianca Cheung, Maria Loreto Flores, Clara Martins
Executive Architect
Leigh & Orange, Hong Kong
Local Architect
CAA City Planning & Engineering Consultants, Macau
ZHA Project Team
Miron Mutyaba, Milind Khade, Pierandrea Angius, Massimo Napoleoni, Stefano Lacoponi, Davide Del Giudice, Luciano Letteriello, Luis Migue Samanez, Cyril Manyara, Alvin Triestanto, Muhammed Shameel, Goswin Rothenthal, Santiago Fernandez-Achury, Vahid Eshraghi, Melika Aljukic
ZHA co|de Team
Structural Engineering: Buro Happold International, London/Hong Kong
M&E Engineering
J. Roger Preston

http://www.zaha-hadid.com/

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