Scania社

開発プロセスでsolidThinking Inspireを使い、シミュレーション主導の設計プロセスを実施



商用車とエンジンの世界的なメーカー SCANIA社


SCANIA社は、トラックをはじめとする商用車とエンジンの世界的なメーカーです。スウェーデンに本社を構え、100か国以上で事業を展開。全世界で約38,600人の従業員を擁しています。

乗用車および商用車の業界では、新製品を市場に投入する際に多くの課題に直面しています。今日のCO2排出規制や、低燃費の車両を求める顧客の求めに応じて、各社はより軽量で低燃費かつ安全な製品の開発を推進しています。それに加え、市場での競争は非常に激しく、また価格圧力も強いことから、開発チームは設計プロセスを迅速化し市場投入期間を短縮することを迫られているのです。Scania社では、こうした多くの課題を受けて、開発チームが現状のプロセスの見直しに取り掛かりました。

試作機を使った従来型の実機試験から仮想試験に移行したところ、設計とエンジニアリングの部署間でのやり直しがあまりにも多く発生してしまいました。そこでScania社は、設計作業における設計エンジニアの責任範囲を拡大する、シミュレーション主導の設計プロセスを導入しました。これを実現した施策こそが、solidThinking Inspireによる設計の初期段階でのシミュレーションと最適化です。

「Inspireは非常に有益なツールで、設計エンジニアが構造の挙動をより深く理解するための一助となっています。Inspireを使うことで、品質、重量、剛性に優れた製品や部品を作成できると確信しています」
Mikael Thellner Technical Mgr for Topological Optimization, Scania

solidThinking Inspireを設計プロセスで活用


シミュレーションと最適化を設計プロセスの初期段階に導入することにおいては、Inspireは非常に便利なツールです。設計プロセス変更の狙いは、設計エンジニアが設計上の課題を特定したら即座にInspireでの作業を始められるようにすることにありました。こうすることで、「材料はどこに配置すべきか?」、「運転荷重に耐える構造はどのような形状か?」といった疑問に答えることができます。こうした疑問に答えるために、CAD環境での設計作業を開始する前に、Inspireでの作業を行うようにしました。

新しい設計プロセスでは、まずScania社の設計エンジニアが設計空間を定義し、荷重などの境界条件を適用してから最適化を実行します。Inspireによって生成された最適な構造形状をCADシステム(Scania社の場合はCATIA)に転送し、形状の細部を調整するとともに最初の構造解析を実行することで、応力や変形などのパラメーターが所定の仕様内に収まっているかどうかを確認します。

Inspireの導入以前は、設計エンジニアが適正なツールを持ち合わせていなかったため、応力基準に準拠しているかどうかの確認はCAEエンジニアのみが担当していました。Scania社での新しい指針では、設計エンジニアもCADツール内で(すなわちCATIAの解析機能を使って)構造周りの作業を行うことができます。

最近では、Scania社はこの新しい設計プロセスを適用して、ステアリングアームの設計見直しを実施しました。再設計にあたり、はじめに設計エンジニアがInspireで新しい部品の設計空間を定義し、CAE部門から提供された荷重と境界条件を適用。これにより、設計エンジニアはInspireを使って複数の設計案を作成することができました。その後、これらの設計案に微調整を加え、Catiaで解析を実行。最終的な設計をCAEエンジニアに渡し、検証を実施しました。設計は基準を満たしていたため、シミュレーションに基づいて生産用治工具を発注しました。ステアリングアームは安全性が求められる部品のため、実機試験が必須でしたが、新しい設計は必要なすべての試験に合格しました。選択した新しい設計では、部品の重量が30%削減されたほか、開発期間を大幅に短縮できたのです。プロジェクトを成功に導いた要因の1つは、設計、CAE、試験の各担当者間で緊密な連携を取れたことにありますが、それを可能にしたのは、設計プロセスの初期段階に実施したシミュレーション作業でした。

設計プロセスに最適化ツール(Inspire)とシミュレーション作業を導入したことで、設計エンジニアは自身の設計についてCAEエンジニアや試験エンジニアからの評価を待つ必要がなくなりました。これが各部署間での差し戻しの削減につながったのです。現在では、設計が重量や剛性の基準を満たしているかどうかは、設計エンジニアによってすでに確認されているため、設計部門からの設計案については最終チェックのみで済むようになっています。これにより、設計プロセスの合理化と高効率化が実現しました。

荷重などの境界条件の基準については現在もCAEエンジニアがデータを提供しており、日々の作業中にこうした基準に関する質問に答えています。またCAEエンジニアは、部品の製造や実機試験を行う前に、設計が本当にすべての基準を満たしているかどうかを検証しています。Inspireを使用する以前は、CAEエンジニアと試験エンジニアが設計プロセスを主導していましたが、今ではその役割を設計エンジニアが担っており、シミュレーション主導の設計プロセスという基本方針の定着に貢献しています。

元の部品

設計空間

Inspireの設計空間と荷重条件

最新設計の解析

今後の計画


新しいプロセスを策定したScania社では、最終的な設計の確定までに必要なCAEと設計の部署間でのやり直し回数の減少がすでに見られます。このプロセスを成功させるには、Inspireなどのソフトウェアをうまく使いこなせるかどうかが鍵を握っています。Mikael Thellner氏は次のように述べています。「たとえばダイエットをしたい場合、新品のランニングシューズを買うだけでは不十分で、実際にランニングもしなければなりません。設計についても同じことです。新しいプロセスをスタートさせるには、Inspireのライセンスをいくつか購入するだけでなく、ソフトウェアを効率良く使いこなす必要があります。それを達成できさえすれば、シミュレーション主導の設計プロセスのメリットを余すところなく享受できるようになります」。

そのメリットとは、開発プロセスの合理化、部品の軽量化と剛性の強化、そして設計、CAE、試験の各エンジニア間のより緊密な連携であり、これらすべてが、開発期間とコストの大幅な削減や、より良い製品の実現につながるのです。

About Scania社

Scania社は、100以上の国に販売・サービス拠点を持つグローバル企業で、商用車やエンジンソリューションの開発を行っています。同社の生産拠点はヨーロッパおよびラテンアメリカにあります。約38,600人の従業員を擁し、そのうち約16,000人は各国のScania子会社で販売・サービスを担当、約12,400人は7か国の生産拠点や6つの新興市場に置かれた地域製品センターで勤務しています。本社はノルウェーのセーデルテリエに位置し、販売や管理部門などに合計5,800人が従事。またセーデルテリエでは、3,300人が携わる研究開発事業も行っています。

Scania AB (publ)
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