「Inspireは非常に有益なツールで、設計エンジニアが構造の挙動をより深く理解するための一助となっています。Inspireを使うことで、品質、重量、剛性に優れた製品や部品を作成できると確信しています」
Mikael Thellner Technical Mgr for Topological Optimization, Scania
solidThinking Inspireを設計プロセスで活用
シミュレーションと最適化を設計プロセスの初期段階に導入することにおいては、Inspireは非常に便利なツールです。設計プロセス変更の狙いは、設計エンジニアが設計上の課題を特定したら即座にInspireでの作業を始められるようにすることにありました。こうすることで、「材料はどこに配置すべきか?」、「運転荷重に耐える構造はどのような形状か?」といった疑問に答えることができます。こうした疑問に答えるために、CAD環境での設計作業を開始する前に、Inspireでの作業を行うようにしました。
新しい設計プロセスでは、まずScania社の設計エンジニアが設計空間を定義し、荷重などの境界条件を適用してから最適化を実行します。Inspireによって生成された最適な構造形状をCADシステム(Scania社の場合はCATIA)に転送し、形状の細部を調整するとともに最初の構造解析を実行することで、応力や変形などのパラメーターが所定の仕様内に収まっているかどうかを確認します。
Inspireの導入以前は、設計エンジニアが適正なツールを持ち合わせていなかったため、応力基準に準拠しているかどうかの確認はCAEエンジニアのみが担当していました。Scania社での新しい指針では、設計エンジニアもCADツール内で(すなわちCATIAの解析機能を使って)構造周りの作業を行うことができます。
最近では、Scania社はこの新しい設計プロセスを適用して、ステアリングアームの設計見直しを実施しました。再設計にあたり、はじめに設計エンジニアがInspireで新しい部品の設計空間を定義し、CAE部門から提供された荷重と境界条件を適用。これにより、設計エンジニアはInspireを使って複数の設計案を作成することができました。その後、これらの設計案に微調整を加え、Catiaで解析を実行。最終的な設計をCAEエンジニアに渡し、検証を実施しました。設計は基準を満たしていたため、シミュレーションに基づいて生産用治工具を発注しました。ステアリングアームは安全性が求められる部品のため、実機試験が必須でしたが、新しい設計は必要なすべての試験に合格しました。選択した新しい設計では、部品の重量が30%削減されたほか、開発期間を大幅に短縮できたのです。プロジェクトを成功に導いた要因の1つは、設計、CAE、試験の各担当者間で緊密な連携を取れたことにありますが、それを可能にしたのは、設計プロセスの初期段階に実施したシミュレーション作業でした。
設計プロセスに最適化ツール(Inspire)とシミュレーション作業を導入したことで、設計エンジニアは自身の設計についてCAEエンジニアや試験エンジニアからの評価を待つ必要がなくなりました。これが各部署間での差し戻しの削減につながったのです。現在では、設計が重量や剛性の基準を満たしているかどうかは、設計エンジニアによってすでに確認されているため、設計部門からの設計案については最終チェックのみで済むようになっています。これにより、設計プロセスの合理化と高効率化が実現しました。
荷重などの境界条件の基準については現在もCAEエンジニアがデータを提供しており、日々の作業中にこうした基準に関する質問に答えています。またCAEエンジニアは、部品の製造や実機試験を行う前に、設計が本当にすべての基準を満たしているかどうかを検証しています。Inspireを使用する以前は、CAEエンジニアと試験エンジニアが設計プロセスを主導していましたが、今ではその役割を設計エンジニアが担っており、シミュレーション主導の設計プロセスという基本方針の定着に貢献しています。