Race Face社

現行のアルミ合金製クランクと同じ重量に抑えた自転車クランクを設計・製造

Race Face Performance Products社は、高性能の自転車用品を設計・製造する大手企業です。創業以来20余年にわたり、カナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバーを本拠地に、40ヶ国以上で主に高性能自転車用部品、ウェア、プロテクターの販売を手掛けています。

次世代の自転車クランクを企画するにあたり、Race Face社は、現行のクランクの重量を増やさずに剛性を高めることを目標に据えました。また、新型クランクでは強度目標の維持も欠かせませんでした。「私たちは、金型にかかるコストや各部の加工を最小限に抑え、コスト効率の高い方法で製造することを条件に掲げました」と、同社のSenior Design Engineerを務めるChris Heynen氏は述べています。

新しいクランクアームを設計する際、Race Face社ではこれまで、I字型断面の設計を使って剛性の最大化を試みていました。目標は、クランクアーム各部の慣性モーメントを最適化することです。そのために有限要素解析を実行し、目的の形状と重量において応力が最小になるまで変更と修正を繰り返しました。

solidThinking Inspireをデザインプロセスで活用

Race Face社は、solidThinking Inspireに出会ったことにより、設計内の材料配置をより深く理解し、デザインプロセスの大幅な改良と迅速化が可能になることに気が付きました。また、Inspireに内蔵されている製造性制約条件を2次元の鍛造プロセスに活用できることも、すぐに分かりました。

クランクアームのコンセプト生成を始める際、Race Face社はまず非常に大まかな設計空間をInspireにインポートし、材料や荷重の条件とともに両方向の製造性制約条件を適用したところ、Inspireで生成されたコンセプトは、従来のI字型構造とは大幅に異なるものでした。

「これらの結果から、クランクのボス付近の設計空間を小さくしても問題ないという結論に至りました」と、Heynen氏は振り返ります。「そこで、最適化する前に、自分のモデルの設計空間を微調整し、既知の最終設計において必須ではない材料をすべて取り除きました。これで、出発点となる設計空間全体が縮小されました」次にRaceFace社は、こうして改良した設計空間を使って、剛性の最大化と質量の最小化をそれぞれ満たす2つのコンセプトの生成に取り掛かりました。
「従来の2次元の鍛造や加工のプロセスは、これ以上最適化できないだろうと考えていました」

「最終的に完成したクランクアームは、以前のバージョンと同じ重量でありながら、25~50%(試験によって異なる)も剛性がアップしたと同時に、強度も大幅に向上しました」
Heynen氏は、これらのコンセプトを自身のCADプログラムに取り込み、最終的な設計を構築しました。Heynen氏は、「設計が完了した後、Inspireを使って生成した設計に基づき鍛造金型を作成しました。最終的に完成したクランクアームは、以前のバージョンと同じ重量でありながら、25~50%(試験によって異なる)も剛性がアップしたと同時に、強度も大幅に向上しました。降伏点の上昇が、剛性の上昇に直結したのです」と、述べています。

solidThinking Inspireをコンセプト生成に使用したことで、RaceFace社は、製品設計プロセスを大幅にスピードアップできただけでなく、以前のバージョンよりも強度の高い、ユニークな設計の製品を生み出すことに成功しました。理想的なコンセプトを生成してから、CADで設計の細部を作り込んだことで、設計のやり直し回数を削減しました。さらに、対称や抜き方向などの製造性制約条件を利用し、2次元鍛造での製造に適した部品を設計することができました。

今後の計画

Race Face社は、solidThinking Inspireをコンセプト生成に使用することのメリットを身をもって実感しました。以前の製品よりも剛性の高いクランクアームを作成できただけでなく、極めてユニークな設計の製品を実現できたのです。今後、Race Face社はsolidThinking Inspireを継続的に活用して、設計の重量軽減をより一層進めたいと考えています。

Inspire で生成された初期のコンセプト形状

初期のコンセプト形状に基づいて改良した設計空間

剛性を最大化したコンセプト形状

最終的に鍛造された部品

完成品

About Race Face社

カナダのブリティッシュコロンビア州バンクーバーに本社を置くRace Face Performance Productsは、最先端かつ高性能の自転車部品、ウェア、プロテクターの設計・製造において、20年以上の実績があります。40ヶ国以上で製品を販売するグローバルなサイクリング用品ブランドであり、世界中の様々な種目のプロアスリートや組織に協力しています。Race Face社では、選手たちが自ら製品を設計し、ノースバンクーバーの高難度トレイル“ノースショア”でテストを行っているため、どんな過酷なライドでもその確かな耐久性を実感することができます。

Race Face
Performance Products
3145 Thunderbird Crescent
Burnaby, BC
V5A 3G1 Canada

https://www.raceface.com/